ウェブデザイナーの年収実態について、現在の業界全体を踏まえてわかりやしく解説します。
ウェブデザイナーの年収は、スキルや所属する企業によって大きく異なるため、年収の平均値だけを見ても参考になりません。
そもそもデザイン職全般は、売り上げに直結しにくい職業ではありますが、このウェブデザイナーという職種は数値で成果をダイレクトに可視化しやすいため、売り上げ貢献の評価を得やすいです。
本記事では、年収別に考察したウェブデザイナーの特徴をご紹介しています。
それぞれの年収別でウェブデザイナーはどういったスキルやポジションを持っているのか?という視点でご覧ください。
これからウェブデザイナーを目指される方や、現在ウェブデザインを行っているが年収の上げ方がわからないと感じられている方には、ぜひ読んでいただきたい内容です。
※年収例の目安は東京エリアの企業に所属した場合の例となります。地域で差がありますのでご注意ください。
年収別スキルセット一覧
年収300万円代のウェブデザイナー
アルバイト・パートや見習いのウェブデザイナーは、だいたい300万円代のゾーンからスタートします。
実務経験が浅く、独学で学んでは見たものの、まだひとりでWEBサイトの制作が出来るわけではなく、先輩に教わりながら日々成長されている方が多いです。
このクラスで年収を上げるには、とにかく実践を積み上げるために日々鍛錬を怠らない事です。仕事で周りの人がOKと言っても終わりではなく、世の中の同じジャンルの作品と沢山比較して足りないところを補いながら、自分自身でクオリティを上げることに貪欲にトライする事を続けてください。
役職 | なし |
実務経験年数の目安 | 0~2年 |
使えるツール | Adobe Photoshop見習い Adobe XD見習い |
コーディング言語 | 簡単なもののみ作れるレベル 粗削り状態で手打ちが出来ない |
年収400万円代のウェブデザイナー
東京都内を例にすると、一番割合が多いゾーンがこの年収400万円代となります。
誰でも実務経験を積み続ければ1~5年程度でたどり着ける領域です。ただし同じ会社で同じ作業だけを5年間やり続けても400万円代前半で年収増加が停滞してしまう傾向にあります。自らスキルや役割の幅を広げていくことで活躍できる案件が増えていき、徐々に400万円台後半に年収アップしていくことができます。
役職 | なし |
実務経験年数の目安 | 1~5年 |
使えるツール | Adobe Photoshop Adobe XD Adobe Illustrator Powerpoint |
コーディング言語 | HTML、CSSで手打ちが出来る |
年収500万円代のウェブデザイナー
このクラスになると、自分の役割以外のスキルを身に着け、活躍の場を自ら広げている方のゾーンになります。
WEB制作スキルはJavascriptなどの言語が扱えるようになり、デザインに動きを入れたものを制作できるようになっている方が多いです。
またPowerpointなどを駆使したプレゼン能力も身に着け、数値分析なども加味したクライアントや経営層向けの資料作成も行えるようになっています。
このクラスでは「仕事の責任」も徐々に重くなっていくので、ストレスを抱えたり、案件量の多さに忙殺されて慢性疲労に陥る場合もあります。自分のスキルを磨くことや得意なことをするときは楽しくストレスフリーなのですが、頼まれ仕事や雑用などが多くなってくると苦痛に感じてしまい疲労が増していくというサイクルに陥りがちです。
従って、楽しくない仕事もしっかり行えるだけのメンタルを付けることで、より幅広い仕事に無理なく対応できるうスキルが必要になります。
役職 | 主任、チーフ |
実務経験年数の目安 | 3~10年 |
使えるツール | Adobe Photoshop Adobe XD Adobe Illustrator Powerpoint/Excel |
コーディング言語 | HTML、CSS Javascript |
役割 | 部下の指導 制作進行管理 要件ヒアリング アクセスログ解析 プレゼン |
年収600万円代のウェブデザイナー
600万円代に突入したウェブデザイナーは、単にデザインだけをする人から脱します。
このクラスになると、マーケティングのプランニング、デザイン、コーディング、効果測定まで一通りの作業を一気通貫で行えるスキルを持っている人が多いです。
知識の幅も全体的に積み上げてきた基盤をもとに、さまざまな業務に対応できるようになっています。
またチームをまとめるリーダー的な存在となり、マネジメントクラスで活躍されている方がいるゾーンもこのクラスになります。
役職 | クリエイティブ部門責任者 |
実務経験年数の目安 | 5年~ |
使えるツール | Adobe Photoshop Adobe XD Adobe Illustrator (Adobe Premier) (Adobe After effect) (3D系ソフト) Powerpoint/Excel/Word WEB系Analyticsツール |
コーディング言語 | HTML、CSS Javascript PHP |
役割 | マネジメント 部下の指導 要件ヒアリング マーケティングのプランニング アクセスログ解析 プレゼン 経営への報告資料作成などの業務 |
年収700万円以上のウェブデザイナーになる条件は?
700万以上のウェブデザイナーになるためには、スキルを身につけるだけでは厳しくなってきます。
特に制作会社で雇われの身では、WEB制作の業界平均売上相場的にも人件費のアッパーを超えてしまうので、年収の天井にぶち当たってしまうラインです。
ウェブデザイナー職のままで700万円以上をもらうには、以下の方法が必要になってきます。
年収700万円以上を目指す方法
ウェブデザイナーが年収700万円以上を目指す方法としては、主に以下の5つの方法があります。
- より給与が高い職務を兼務する(売上を伸長できるスキルを持ったマーケターなど)
- ソーシャルゲーム業界などの高利益高給与の会社に転職する
- 大手広告代理店やコンサル会社のクリエイティブ部門に転職する
- 副業でフリーランスとして活動する
- 独立してデザイン事務所を立ち上げる
1については、実力さえあれば今の職場でもすぐに実践可能です。
2,3については転職活動をしながら常に良い求人がないかをウォッチし続ける必要があり、少し時間がかかります。
4は実力があれば意外とすぐに副業としてクラウドソーシングなどで稼ぐことが可能です。ただし、受注金額は非常に安く、ダブルワークによる心身の疲れには注意が必要になります。
5は、可能性としてクライアントのツテがすでにあれば年収アップも望めますが、収入が不安定になるので逆に下がる可能性も考慮して慎重に決断する必要があります。独立する前に、有名な広告賞を取るなどの営業目的のブランディングなどの準備も事前に行っておく必要があります。
マーケティングの深い知識とプランニング能力について
ここで1について具体的に深彫りします。
デザインの貢献で、商品の売り上げが上がることが立証できれば、高い給料を獲得する説得材料を得ることになります。給料交渉などで経営者を納得させられるだけのわかりやすい成果を創出するためには、マーケティングプランによる成功とその立証能力が必要です。
具体的には以下の例があります。
- マーケティングプランのPDCAをすべて行えるだけの知識
- アクセスログ解析ツールや競合調査ツールの活用により成果となる数値の可視化能力
- 経営を納得させられるだけの成果の可視化と説明能力
上記のような自分のデザインが売り上げ貢献に寄与したという説明能力を有することが出来れば、クライアントや経営者が手放したくない人材であると認識させることができ、給与交渉が優位に進むことになります。
業界別年収事例
次に、所属する会社の業界別年収事情をご紹介します。
制作会社勤務の場合
制作会社は、受託業務が中心なので自分自身が制作会社の経営メンバークラスまで上がらないと、年収700万円以上は厳しいのが現実です。
受託系は常に案件を動かしながらクライアントの委託業務を行うため業務時間も長く、コンペを通して価格交渉などを経て受注した案件の売上ではあまり高い利益を得られません。
したがって高利益でない案件を同時進行でたくさん行っているのが実情です。そうなると一つの案件に多くの時間を割くことが出来ず、デザイン作業も単調になり、単に時間を売っているだけの感覚に陥りがちです。
ですが、制作会社では競合他社との競争で常にスキルに磨きをかけ続けないと勝てないという環境下であり、労働時間も裁量労働制の会社が多いため、残業時間を気にせず思いっきりスキルアップを追求することができるというメリットもあります。
インハウスデザイナー
インハウスデザイナーとは、受託系制作会社で働くのではなく、発注側の企業に所属して自社内で製作作業を行うデザイナーを指します。
一般企業のインハウスデザイナーの中でも、所属する部署や企業によって給与には幅があります。以下3種類の特徴を踏まえて選択しましょう。
一般企業(広報部門)のインハウスデザイナー
広報部門は、企業の一般的な社内外告知を行う部門です。
社外向けには、プレスリリースや企業協賛イベント告知、自社企業サイトなどの運営などの企業ブランディングや企業認知強化などの役割があります。
社内向けには、イントラサイトの運営や社内啓蒙ポスター掲示物のデザインなどを行い、従業員エンゲージメント強化などの役割もあります。
中小企業では商品の宣伝などを行うプロモーション的な業務を兼務する事もありますが、広報部門は経営者としてはあまり高い人件費を投資しない部門でもあります。したがって給与が上がりづらいという特徴があります。
一般企業(マーケティング・営業部門)のインハウスデザイナー
マーケティング部門や営業部門に所属するインハウスデザイナーは、商品売上向上に寄与するという明確なミッションがあり、売上・利益向上というKPI(目標数値)をノルマに活動します。
そのため自分の成果を可視化しやすくなり、自社の成長に欠かせない存在として地位を上げていくことが可能です。
社内表彰制度での受賞やクリエイティブチームとしての独立部門立ち上げによる役職の昇進などを経て、年収をアップさせることが可能です。
ただし一般的な企業の多くは、執行役員などの経営幹部メンバーの給与が高くない場合、アッパーに達してしまい部長以上になっても給与が上がらなくなることが多いです。スペシャリスト等級などの評価制度があれば特殊技能として上限が高くなることもありますが、そういう給与制度がある会社はあまり多くありません。
ソーシャルゲーム業界やEC業界などの高利益企業のインハウスデザイナー
ウェブサービス系に多くある高利益の業界や企業では、売れるウェブデザイナーの給与が高騰している傾向があります。
わかりやすい例としてはソーシャルゲーム業界やEC業界などが挙げられ、成果を数値で可視化しやすく、WEBサイト(プロダクト)のデザインやUI改善が成功すると、数千万~数億の改善効果を創出することも可能です。
またスキルが高いウェブデザイナーやエンジニアは常に取り合いになっており、実績やポートフォリオなどが魅力的であれば、比較的すぐに転職が決まりやすいです。
実力が身についたと感じているウェブデザイナーは挑戦してみるとよいかもしれません。
こういったウェブ系サービスの高利益企業は人材投資に多額の費用を投じており、どちらかというと、自分たちで手間暇かけて求人を掲載して募集する転職サイトよりは人材紹介会社を使う傾向も強いので、ポートフォリオを作成して人材紹介会社に渡しておき、高給与案件が合ったら声をかけてもらうようにしましょう。
人材紹介会社例
大手広告代理店・コンサル業界
次に、大手広告代理店やコンサルティング会社に所属するデザイナーの年収事情について解説します。
大手広告代理店のデザイナー
電通や博報堂といった大手の広告代理店、外資系の広告代理店に所属するデザイナーは、入社するのも大変ですが、その分年収が高い傾向があります。
会社で定められている最低給与のベースが高く、年収上限も高いというのが実態です。
大手企業を相手にするため受注する額が比較的に高く、デザイン費にかける予算も潤沢にあるため、高額なコストがかる撮影やタレントの起用、イラストレーターや動画クリエイター、ライターやフォトグラファーなどと協業したクリエイティブ活動が可能になります。
自身の作品としてのポートフォリオも輝きを増していくので、キャリアパスとしても非常に充実した経験を得ることができます。
コンサルティングファームのデザイナー
コンサルティング業界の会社にもデザイナー職があります。主にブランディング戦略や大規模サイトリニューアルなどで活躍しています。
広告代理店同様、多額の受注額をもとに作業を行うため年収の幅は高めに設定されています。
コンサル会社のデザイナーは、戦略的な思考でロジカルにデザイン提案を行う必要があり、インパクト重視でデザインをするのではなく、競合調査やユーザヒアリング、さまざまな分析手法をもとにデザイン作業を行います。
したがって論理的思考に長けているデザイナーには向いている業界です。
フリーランス・制作会社起業
フリーランスやデザイン事務所を起業する方は、年収の幅が自分の努力次第で大きく変動させることが可能です。
すべてを自分で行うフリーランスの場合、常に仕事を発注してもらえる優良企業をクライアントにつけさせすれば、高い利益率で安定した収益を得ることが可能です。
ただしフリーランスになると、自分で営業をしなけばならないため、好条件のクライアントを見つけられない場合、単発の案件を多数行うような薄利多売の状態に陥り、経済状況に左右され仕事の発注も安定しないことから、年収も安定しません。
制作会社を起業する場合も、上記とほぼ同様です。従業員を抱えることで固定費が高くなります。安定した経営を行うには、常に継続した発注をしてもらえる大手企業などからの受注ルートがないと難しくなります。
自社メディアで広告収入を得られるウェブ媒体を得ることが出来れば、やや安定してくる場合もあるので、受託だけでなく自社プロダクトとしてのオウンドメディアを構築するウェブプロダクションも増えています。
売れるためのスキルを身に着けるべき
最後に、ウェブデザイナーが年収を上げるために持つべきスキルは、商品やサービスの売上向上に寄与するデザイン関連スキルを身に着けることが必須条件と言っても良いでしょう。
本記事で紹介したように、ウェブサイトが会社の経営を押し上げるツールであると経営に認知させ、貴重な人材として投資すべきと思わせるような行動(プレゼン)をしてください。
以下は、本記事でご紹介したスキルと年収の関係をレーダーチャート式にまとめてみました。ご自身のスキル分析の例とご参考ください。
現在の職場や置かれた立場だけで目標を設定するのではなく、より幅広い視野を持ってウェブデザイナーとしてのキャリアパスを描いてみてください。